御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
ザワザワの中心を見ると、そこには慌てる秘書さんを従えた常務がいた。

多分、時間がないのにここに来たんだろう。

係長にお褒めの言葉でもかけるのか、と係長の姿を探していたら、常務がこちらに向かって一直線に歩いて来た。


「やあ、久しぶりだね、鈴木香奈美さん。ちょっといいかな?」


はぁ!?って顔をした自信がある。
だって突然すぎて意味不明すぎるでしょ。


でも常務はそんな顔した私に動じる事なく更に言う。

「ちょっとお話したいと思ってね。いいよね?」

この口調と、態度。拒否なんて選択肢はないらしい。
しっかし、裏に感じる黒さが係長の5割増しなのは兄だからか、常務だからか。


諦めて「はい」と立ち上がったら、横から係長が飛び出してきた。
どうやら、突然すぎて係長も固まっていたらしい。
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