*短編*放課後、きみとわたし、おなじ赤。
そんな中、廣田がぽつりと声をこぼした。
その声には端々から緊張感がにじみ出ていて。
相変わらず軽く押さえたままの廣田の手の感触や温度も相まって、こちらにも緊張が感染していく。
「見られたのは、汐崎にだった。それから少しして、俺もお前みたいに自分の好きなやつが自分以外の誰かに恋に落ちる瞬間を見た。そのときもお前と同じで告白しなくてセーフだったって思ったし、そんな自分にへこんでどうしようもなくなった。でも、俺はずるくて卑怯なやつだから、そいつの恋が終わるまで待って、こうして弱ってるところに付け入ろうとしてる」
「そ、それ、って……」
「目の前にいるお前以外に誰がいる?」
「――っ!」
まるで懇願するようなその問いかけに、瞬間、ドクンと心臓が大きく脈打った。
廣田がわたしを……? うそ、そんな……まさか。
だって、わたしの前じゃ廣田はいつもスマホのゲームから顔を上げないじゃない。
話しかけてもだいたい素っ気ない返事しかしないし、部活が終わるのを待ってる間、何度もふたりきりで過ごしたけど、ちっともそんな素振りなんて……。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
--もう廣田のことで頭がいっぱいだ、わたし……。