*短編*放課後、きみとわたし、おなじ赤。
「どうだ、失恋なんて吹っ飛ぶだろ?」
「……う、うん」
吹っ飛ぶどころじゃないよ、もう今は廣田のことしか頭にないよ。
なんだか得意げな調子で聞かれて、ちょっと悔しくて。
でも、喉の奥がきゅっと詰まってどうにも苦しくて、思ったことのひとつも言えずに、仕方がないから心で悪態をつく。
卑怯だとは思わないけど、廣田はずるい。
さっきまでは全然震えてなかったのに、どうして今になって手が震えはじめちゃってるの。
こんなの、ずるいじゃん。
ちょっと胸がきゅっとしちゃうじゃん。
「悪いな、頭押さえつけたりして。だけど、ちゃんと好きって言うから、顔、上げてくんない?」
ふいに廣田の手の圧迫感から解放されて、頭の上が軽くなる。
でも、そう予告されたところで、もうほとんど告白しちゃっているようなものだから、こういうときに素直に頭を上げていいものなのか、ものすごく迷う。
それでも廣田が「ちゃんと目を見て好きって言いたい」なんて、またナチュラルに告白しながらちょっと可愛い口調で言ってくるから、わたしはどうしようもなく……それを正面から受けざるを得なくなる。