カモフラージュ

あの頃は壊れていた。


タバコ・万引き・シンナー・家出・暴力


父と母に、酷い言葉を何度も吐いた。


とにかく " ウザくて、大嫌い!" だった。


聖菜が結婚して落ち着いたけど


親子の距離は縮まらなかったんだ。。。



そっと父の手を握ると


弱い力だったけど、握り返してくれた。


「千尋がお見舞いに来ない日は

          機嫌が悪かったよなぁ?」


兄の言葉に、父は少し顔を歪めた。


千尋は、やり切れない思いで後ずさる。


すると、母がそっと横に来て


肩に手をまわし、抱き寄せてくれた。



父を誤解していたのかも・・・



父に抱きつき、精一杯の感謝を込めて


《ありがとう》と言った。


その言葉を待っていたみたいに


父は息を引き取った。



それは、とても静かで・・・とても穏やかな


父の最後だった。




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