カモフラージュ
そんなある日、リビングでテレビを見ていると
珍しく、千尋の隣に母が座った。
「どうしたの?」
「最近、お父さんおかしいの」
「何が?」
「夜中に変な咳をするんだよねぇ
コンコンって」
「風邪の咳とは違うの?」
「違うと思う・・・ 背中も痛いって」
「病院行ってみたら?」
「そうだよねぇ」
「大丈夫!殺しても死なないよ!」
アハハ!
数日後。
「お父さん肺癌だって」
「え?」
「今日、病院行って来た」
「うん」
「もう末期で、2ヶ月もたないって」
「えぇ?」
「どうしよう?」
擦れた声の母を見ると泣いている。
でも、千尋は涙が出なかった。