カモフラージュ
父は入院して詳しく検査をしてみると
もう、手が付けられない程進行していた。
【一ヶ月だと思って下さい】
宣告が短くなった。
日に日に痩せていく父を心配して
母は、一週間前から病院に泊まっていた。
ラララ~!
兄の携帯
「母さんからだ」
『うん』
紀香さんも返事をして
千尋は背筋を伸ばした。
「お父さんが・・・すぐ来てっ!」
兄の車に乗り込み病院へと急ぐ。
千尋は、身体が震えて声も出ない。
「大丈夫か?」
兄が優しく頭を撫でてくれたけど
その手も震えていた。
病室のドアを開けると
「間に合って良かったです」
先生と看護師さんの安堵の顔。
母は、父の頬を両手で包み泣いている。