カモフラージュ

張り詰めていた糸が、音を立てて切れた。


「あのぉ・・・怖いです・・・グスン」


「ごめんね。

  泣かせるつもりはなかったんだけど・・・」


「大丈夫です・・・

    全部見透かされてるようで・・・

         社長さんには嘘がつけない」


「嘘じゃなくて、隠してるんだよね?

                弱い自分を・・・」



そこまで分かってるの?



グスン。。。グスン。。。


千尋の泣き声だけが、車内に響いている。


和馬は心配そうに、何度も千尋の顔を見て


そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭を撫でた。


その手を上から握ると


和馬はビクッ!と驚いた。



「この手が、兄に似てるから・・・

        だから・・・安心出来るんです」


「お兄さん?」


千尋は、兄の話を少しだけして手を離した。


すると、今度は和馬が千尋の手を握った。


「あっ・・・」


「大丈夫!何もしないよ」


泣き止むまで、ずっと握っていてくれた。




< 88 / 325 >

この作品をシェア

pagetop