カモフラージュ
兄は、紀香さんの手を取って枕元へ。
「もうすぐ子供も産まれるから
それまでに元気にならないと」
やっとの思いで、頷く父。
千尋はどうしていいか分からず
入り口で立ち尽くしていた。
すると、父が手招きをしている。
「あたし?」
戸惑いながら兄を見ると、小さく頷いた。
「千尋・・・顔・・・見せろ・・・」
小さな声。
そっと父の顔を覗くと
今まで見た事のない優しい顔で笑った。
そして、千尋の頭を撫でた。
「見た・・・かっ・・・」
搾り出した声なので聞き取れない。
「千尋の花嫁姿を見るのが
俺の楽しみだって」
母が教えてくれた。
「嘘?」
「仕事一筋だし、年頃の娘との接し方が
分からないから、辛くあたるって」
「うん」
「中学で反抗期もあったしね?!」