聖夜に口づけのプレゼント
聖夜のプレゼント
時間は夜の十時。駅前にある御用達の居酒屋で、私の目の前のテーブルに置かれているのはビールの中ジョッキとチーズお好み焼きだ。チーズの溶けて焼けた芳ばしい匂いが残業終わりの空腹を刺激する。
そんな中、テーブルを挟んで向かい側にいる大学時代のサークル仲間で、現在私の飲み友達である榊秀弥(サカキ ヒデヤ)が喉を鳴らし一気にビールを飲み干した。
はっきり言って秀弥とは気が合うし、一緒にいて楽。だからこそ、大学を卒業してから7年経った今もこうやって二人で酒を酌み交わす。
7年というのは以外にも早くて、私も秀弥も気付いたらもう29歳。周りはどんどんと結婚していくわけで。そのせいか感化された秀弥から最近よく聞かされるいつもの言葉がまた出た。
「なあ、緑。俺と結婚しない?」
「しない」
秀弥の言葉をさらっと流すと、ジョッキを手に取りなみなみと継がれたビールを口へと運ぶ。
「何でだよー。俺って結構、好条件だと思うんだけど」
「どこが!?」
口の中のビールを吐き出しそうになりながらも、それをグッと飲み込みそう訊き返す私は間違ってないと思う。
正直、自分で好条件って言う神経……どうよ。
余りの馬鹿発言にきつめに睨み付けるも、秀弥といえばそんな事は全く気にしていない様子で。それどころか、自分の好条件ぶりを指折り数え主張しだす始末。
「俺、社長だし」
「実家を継いだからね。下町工場を」
「学もある!」
「私も一緒だけどね」
「健康体だし。後は顔がいい!」
自信満々にそう言い切る秀弥を前にして、背中にゾッと寒気が走る。
ない!ない!ない!ないわっ!!
こいつ、……本気でこれ言ってんの。
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