聖夜に口づけのプレゼント
「顔がいいとか自分で言うっ!引くわっ!」
「何でだよ」
いい歳してぷうっと頬を膨らませる秀弥は、確かに顔は悪くない。どっちかというと、イケメンと言われる部類に入るのかもしれない。でも、でもだ。
自分でそれ言うのは、……無しだわー。
「ナルシスト過ぎて、ない!健康体ってとこだけは認めてあげるけど」
「じゃあ、……いつになったら結婚してくれんだよ」
「私が秀弥と結婚したいって思ったら…かな」
「どうやったら思うわけ?」
「さあ?」
ニヤッとわざと笑って首を傾げる私に、秀弥がまた頬をぷうっと膨らませた。
実際、どうやったら自分が秀弥と結婚したいと思うのか分からない。秀弥の事は嫌いじゃない。ただ敢えて言うなら、付き合ってもいないのに何度も言われるこの告白は、その場の雰囲気でという気がして本気で結婚を考える気にさえなれないのが理由なのかもしれない。
ってことは、居酒屋で何回この会話をしても私は秀弥と結婚したいとは思わないのだろう。せめて、好きだから付き合って…くらいなら考えたのに。
そんな事を考えていると、唐突に秀弥が口を開いた。
「あっ、そういえば24と25空けとけよ?」
イブとクリスマス当日を空けとけとさらっと言ってくるのは、私に予定が無いと分かっているからなのだろう。今年は土日という事もあり、仕事もない。かつ、彼氏もない。皆が『メリークリスマス!』なんて言いながらはしゃいでいる日に暇なのは、私と私同様彼女なしの秀弥くらいなものなのだ。
「2日も飲み?酔い潰れるの確定でって事かい?」
「そんなところ」
「ふーん。了解」
照れた様に頬を人差し指で掻く秀弥はどこかいつもと雰囲気が違っている気がして、そう答えながらも少しだけ首を傾げた。