聖夜に口づけのプレゼント
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「美味しい」
ついさっきまで秀弥の事でドキドキしていた筈なのに、美味しい料理というのは緊張を解す効果があるらしく、目の前に広がる料理に舌鼓を打つ。
それに、「緑が幸せそうな顔すると、俺も幸せ」
とニコッと微笑んで言う秀弥に、再び心臓か早鐘を打ち始めた。
「そういうの、……狡い」
「そう?」
「そうだよ」
少し頬を膨らませると、クックッと喉を鳴らして笑う。その姿がいつもと違って、悔しいかな目が離せない。
秀弥がやたらとキラキラ輝いて格好よく見えるのは、私の気持ちの問題なのだろう。
きっと私は……
「ごちそうさまでした」
全ての料理を食べ終えそう言った所で、不意に秀弥の手がスッと伸びてきた。そして、ふわっと私の前髪を触る。
「緑。やっぱり帰ろっか?」
「えっ?」
「幸せそうな緑の顔がもう見れなくなったら嫌だし」
ニカッとわざとらしく歯を見せながらそう言って席を立つ秀弥は、今の関係を壊したくなくて私の答えを聞かない選択をしたんだろう。
きっと私が秀弥の立場でもそう言うと思う。
でも今の私は秀弥の気持ちも。そして、……私の気持ちも知っている。
だから……ーー
「待って、秀弥」
そう叫ぶと共に右手を伸ばし、ドアへと向かって歩きだそうとしていた秀弥の腕をガシッと掴んだ。