星屑プリンセス
「他称、寂しい二人に乾杯」
グラスを合わせキンと小さな音を立て、キラキラと沸き立つ星を飲む。
映画のワンシーンにある海外リゾートのようなホテル二階のレストランで、ピアノとサックスの麗しい音色に心が弾んだ。そしてプライベートテーブルは二人だけの特別な空間をつくる。私はゆっくりと喉を潤わせてから至福をこぼした。
「去年はルームサービスで済ませちゃったから、心残りだったんです」
「なぜ?」
「イブに独りは精神的に辛くて」
「なるほどね」
「なぁんて!総大理石のビューバスに高揚して、ワイングラス片手に裸でスケッチしてました!」
「マジか。男いないのも納得」
苦笑いしながら深く頷かれ、私はムッとする。
「男性とは出会いがないだけ。私は自分の好きなことを追求します。泡風呂も夜景も最高でしたよ?」
道路や街路灯が青白く輝いて、雲の中から天の川を眺めているようだった。
「こういう、いろいろな経験が一枚の絵に結びつくと思うんです」
「同感。作品に懸ける時間は膨大、対して見るのは一瞬。でも心に響いた作品はその人の記憶になる。それは時に懸けた時間よりも長くね」
「そう!だから誰も気づかないような細部にまでこだわれるんですよ」
「そして気づいてもらえるように努力するタイプ、だろ?」
「正解です」
会って間もないのに、私のことをよく知っているみたいで不思議な感覚だ。共感し合える人に出会えるなんて聖夜の奇跡かもしれない。ロマンチックに恍惚とする私を、彼は見据えるようにして口を開いた。
「ここも、あのツリーも、そうかな?」
私がもちろんだと言うと、彼は満足そうに目を細める。
「寝ても覚めても忘れられなくて、絶対にまた来たいと思いました!特にツリーはお気に入りです」
「そんなに好き?」
「はい!あんなに煌びやかなのに、どこか優しくて穏やかで。衝撃でした。私も負けずに、心に残る絵を描きたいと思ったんです」
彼は嬉しそうに頬を染めて、恥ずかしそうに視線を逸らす。ジャズとフレンチに酔いしれ、そのせいか彼に見惚れた。
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