L'eau, je suis important...
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大きな和風の家の中には、広い広い和室があった。
そこに佇む男。
渋いその顔から年齢は30代から40代だろうか。
髭が生えていて、和服を着ているから、さらに大人っぽく見える。
「組長。冴島です。」
「入れ。」
外から声が聞こえ、すぐに返事をした和服の男は、指示を出した。
「はい」
外のやつは、返事をしてふすまを開けた。
「来月に蝶月が炎龍を潰すとのことで、炎龍から共闘してほしいとのことです。」
「蝶月…?」
和服の男は首を傾げた。
「薬などを扱っている族や組を潰している、最近話題のチームです。トップは髙野悠太を含めた4人です。」
「髙野……悠太…?」
和服の男は何か思うところがあったのか、意味深に名前を繰り返した。
「お察しかと思いますが、“あの”髙野悠太です。9年前の事件の…。死んだ男の兄に当たる存在です。」
“あぁ、やはり…。”
そう声が聞こえそうなくらいの納得した表情だった。
「ヤツに伝えておけ。
“共に戦う”と。」
和服の男がそう言うと、“では失礼します”と口にして、男は部屋を去った。
「まだ時間はある」
独り言のようにつぶやいた声は誰にも拾われることなく、消えていった。