L'eau, je suis important...
「何のために?」
阿部がいつもより声を低くして問うてきた。
「薬をやってる族なんか必要ない。」
キッパリとそう言うと、炎龍は気まずそうな顔をした。
あらかた、薬をやってるやつがいることを知っていて、それでも手を付けられなかったんだろう。
「ちなみに、薬を流した“裏切り者”って誰か知ってるか?」
まぁ、俺も初めて聞いたときはだいぶびっくりしたよな。
まさかあいつがそんなことするやつだなんて。
特にリアクションがないので、名前を呼び聞いた。
「なぁ、阿部?お前は知ってんのか?」
「………知らねぇ。」
総長が知らねぇなんて、炎龍も落ちぶれたな。
俺の気持ちを代弁したのは康介だった。
「はっ。総長が知らねぇなんて炎龍も落ちたもんだなぁ。」
康介が炎龍を煽った。
それに佐々木が釣られた。
「なんだと!?もいっぺん言ってみろや!」
怒りからか口調がいつもと明らかに違っていた。
「炎龍は“ゴミ”だっつってんだよ。あ?」
康介は更に言い返した。
知り合いだからこそ、戦う意志が見えなかった炎龍。戦意をもたせるために康介が煽っていた。
そんなのに気づかず、佐々木はお構いなしに言い放つ。