L'eau, je suis important...
大崎の病室の前に来ると、話し声や笑い声がかすかに聞こえてきて、それに少し安心しながら扉を叩いた。
「はーい!」
ピタリと声はやみ、中なら大崎の声が聞こえてきた。
「戻ってきたよ〜」
中に入ると舞羽ちゃんは笑顔で僕を見ていた。
「待たせてごめんね。」
舞羽ちゃんに向けてそう言うと
「ううん。玲くんのおかげで大﨑くんといろんなお話が出来た。」
まぁ、そうなるように仕向けたんだけども、それでも僕のことを思って、僕が気に病まないように言ってくれる舞羽ちゃんは本当に優しい子だ。
「そっか。良かったね。
じゃあ、そろそろ行こっか。」
「うんっ」
舞羽ちゃんは返事をして立ち上がった。
「舞羽ちゃんも佐藤も今日はありがとな。」
「こちらこそありがと。また来るわ」
大﨑の言葉にそう返すと、僕に続くように舞羽ちゃんも言葉をつなげた。
「私も楽しかった。また来るね。」
ふふっと上品に笑った舞羽ちゃんを見て、僕も大﨑も口元が緩んだ。
「じゃ、またな。」
「おう!」
「また今度ね」
挨拶を交わして大崎の病室を出た。
「玲くん、今日はありがとね。無理言ったのに連れてきてくれて。」
病院を出た時に舞羽ちゃんからぽろりと言葉が漏れた。
「ううん。僕も話せて楽しかったから。」
そこから、遠慮する舞羽ちゃんを必死に言いくるめて、舞羽ちゃんの家まで見送って僕も帰路を進んだ。