L'eau, je suis important...
舞羽が病室を出ていく姿をぼーっと見つめていた。
意識が浮上してきたときにはすでに、闇に包まれた空間に一人でいた。自分の足元だけ光っていた。
どのくらいの時間が流れたかはわからなかったけど、とにかく長い時間だった。
ある日、声が聞こえるようになった。
ー「悠太くん。悠太くん。」
それは舞羽の声だった。
その声を聞くだけで、ひどく安心したのを覚えている。
舞羽の声が俺は一人じゃないんだと、そう言ってくれている気がして。
そして優しく手を握ってくれた。その手を離さないように握り返した。
でも、舞羽の声が聞こえてくるのはほんの数分で。
俺は舞羽の声がもっと聞きたくて、その声を頼りに、歩を進めた。
それでも舞羽の声はすぐに消えていって、行き場を失い、その場に座り込んだ。
それが毎日のように続いた。
いつも、その日にあったことを教えてくれていた舞羽が、今日は泣いていた。
その涙を拭ってあげたい。
俺が声をかけたい。
強くそう思い、必死に必死に歩を進めた。
そうすると、眩い光に包まれた。
重たい瞼をゆっくり開けると、舞羽の顔が見えた。
「……さん!髙野さん!?」
「すいません。少しボーッとしてました。」
看護師さんの声が聞こえないほど、トリップしていたようだ。
ひとまず、舞羽の涙を拭えて、舞羽に会えて本当に良かった。
「ずっと眠っていたんですものね。今日は簡単な検査をして、後日レントゲンなどその他の検査をしますね。」
「わかりました」