L'eau, je suis important...
「………」
「………」
いつもでは沈黙すらも心地よい舞羽との関係が今日はなんだか気まずかった。
「じゃ、じゃあ私もそろそろ行くね。玲くんにも悠太くんが目をさましたこと伝えとくから!」
その雰囲気から逃げるように早口で言葉を紡いだ。
「舞羽。」
「ん?」
「…………ごめんな。…ありがと」
舞羽に伝えなければいけないことは山ほどある。
でも俺はまだそれを口にしたくない。
まだ。まだ舞羽とオワカレはしたくない。
自分が言い出すしか選択肢はないんだ。
それならまだ。まだこの幸せな時間に浸らせてくれ。
言いたいことをすべてこの一言に込めた。
それを汲みとってくれたのか舞羽は目を細め、すごく優しくて愛しい顔をした。
「ううん。私も。いつもありがと。」
フフッと優しく笑った舞羽になんとなくこうやって離れていくのかと思って、柄にもなく泣きそうになった。
「じゃあまたね。」
「あぁ。また。」
優しい笑顔で心地いい香りを残して、舞羽は病室からいなくなった。