L'eau, je suis important...
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「ふー」
走ってきたら疲れた。
疲れを追い出すように息を吐いた。
遅刻の常習犯である俺でも
流石に遅くなりすぎるとやべぇからな。
いつもの席についた。
俺の席は、窓側の後ろから2番め。
一番後ろではなかったものの
かなりの特等席だ。
俺らは高校は、担任によって席替えの仕方はバラバラ。
俺らの担任の山田は、好きなやつと
好きなように座っていいやり方。
月に1回あって、たいてい周りの奴らは毎回一緒。
ちなみに毎回第一希望をとって、
それで被った奴は公平にじゃんけんで決まる。
「よっ!悠太!」
そんな言葉を口にしながら
背中を叩いてくるこいつは、佐藤玲(Sato Rei)。
こいつも一般のやつで、全然不良なんかじゃない。
光が当たると金髪にも見える茶髪で猫のようなふわふわの毛。
そして、漆黒の瞳。
その目に見つめられると“すこまれちゃう!”と
クラスの女子が言ってた。
ちなみに、俺の前の席。
その王子様のような甘いルックスがモテないはずはない。
でも、玲はオーラがあるというか、
告られたり、囲まれたりすることはない。
女子の間では暗黙の了解で、抜けがけは禁止らしい。
程よい着崩し方でそれがまた絵になるコイツは、
何をどう思ってか、
無口で地味な俺に話しかけてきた。
ちなみに、背中を叩く力はかなり強い。
最初らへんはだいぶ機嫌も悪くなってたけど
今じゃもう慣れた。
わーお。慣れってコワーイ。
「おー。はよ~玲。」
ダルく挨拶を返す。