L'eau, je suis important...
―数分後…。
静まり返った玄関を特になんの会話もなく、歩く。
外に出ると、外灯の明かりが周りに消えこむように広がっていた。
「………」
「………」
ただ互いに何も話すこともなく、沈黙が続いた。
ふと横を見ると、隣にいるはずの山本がいなかった。
「は!?」
思わず声に出るくらい焦っていると、後ろから早歩きで必死についてきている山本がいた。
あぁ。
俺、最低だな…。
そう思いながら山本を待っていた。
「髙…野くん…?
どう…したの?」
息を整えながら、でもそれを隠すように平然と聞いてきた。
あぁ…。
もう本当にダメだな、俺。
自己嫌悪に陥りながらも山本に返した。
「いや、どうもしてない。」
俺が言った言葉に首を傾げる山本の手首を掴んだ。
「!?
え!髙野くん!?」
そして、俺の方へグッと引き寄せて、手を繋ぎ直した。
「山本、ごめんな…」
山本の顔は暗くて見えなかったが、きっと怒っていたはずだ。
そして、この言葉を最後にまた歩きはじめた。
できるだけ、山本の歩幅に合わせて、早くなり過ぎないようにした。