L'eau, je suis important...




―数分後…。


静まり返った玄関を特になんの会話もなく、歩く。


外に出ると、外灯の明かりが周りに消えこむように広がっていた。




「………」

「………」


ただ互いに何も話すこともなく、沈黙が続いた。


ふと横を見ると、隣にいるはずの山本がいなかった。



「は!?」


思わず声に出るくらい焦っていると、後ろから早歩きで必死についてきている山本がいた。



あぁ。
俺、最低だな…。


そう思いながら山本を待っていた。


「髙…野くん…?
どう…したの?」


息を整えながら、でもそれを隠すように平然と聞いてきた。



あぁ…。
もう本当にダメだな、俺。



自己嫌悪に陥りながらも山本に返した。



「いや、どうもしてない。」


俺が言った言葉に首を傾げる山本の手首を掴んだ。



「!?
え!髙野くん!?」


そして、俺の方へグッと引き寄せて、手を繋ぎ直した。



「山本、ごめんな…」


山本の顔は暗くて見えなかったが、きっと怒っていたはずだ。


そして、この言葉を最後にまた歩きはじめた。



できるだけ、山本の歩幅に合わせて、早くなり過ぎないようにした。



< 67 / 359 >

この作品をシェア

pagetop