L'eau, je suis important...




そして、俺が1歳のとき。

鬱陶(うっとう)しいほどセミが鳴き、アイスが溶けるような暑い暑い日。
8月に、双子の弟が生まれた。



弟は、俺の瞳を片方ずつ持つ。


双子の兄は、宝石のようなスカイブルーの瞳と黒。


双子の弟は、透き通る血のような赤と黒。



俺は、弟が生まれたことが嬉しくて、ずっと一緒にいた。



みんな幸せで、この日々がずっと続くと信じて疑わなかった。




ある日。

海外出張で家を開けていた父が交通事故にあったと警察から連絡があった。


病院に搬送され、息を引き取ったと。




そこからは家族が崩壊していった。



母は仕事に行かなくなり、家で一日中酒を飲むようになった。



酔った母は決まって、俺と双子の弟に暴力を振るうようになった。



その時決まって言われた言葉。




「気持ち悪い目!
どうしてそんなオカシナ目なの!?
アンタたちなんか生まなきゃ良かった!」



俺らを覆う人の影。
そのまま俺らに暴力をふるう。



俺は、生まれてきてはいけなかったのか…?



この時俺はいつもそう思うようになっていた。



でも、そうじゃないんだと思わせていくれる存在がいた。



それが双子の弟だ。


特に何も言うわけでもなく、ニコッとこっちを向いて笑うのだ。



弟も暴力を受けているのに…!



その日から俺はこいつのために強くなるんだとそう思った。




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