Merry Christmas or Me ?
彼は、覚えているだろうか。一年前の今日、私達はこの場所で幸せな時間を過ごしていた事を。
私は、もう忘れてしまっているであろう彼に少しだけでも私の事を思い出して欲しくて、敢えて名称は出さなかった。
彼が、ほんの少しでも私の事を……幸せだったあの頃の私達を思い出して、考えてくれたらいい。そうしてくれれば、今の私は、それだけで幸せだと思うから。
私は、もう一度スマートフォンの画面を見た。画面には、私のメッセージを受け取った柾がそのメッセージを読んだということを示す〝既読〟の表示がある。
今頃、彼は一年前の今日、私達がどこにいたかを思い返しているのだろう。けれど、彼は、思い出す事ができるのだろうか。
そんな心配や期待を胸に抱いて、スマートフォンを握りしめたまま私はまた窓の前へと立った。
さっきよりもまた更に白くなっていた街並み。私は、そんな雪と街を眺めながら、今年は、去年と同様ホワイトクリスマスだな、と呑気に思っていた。すると。
────プルルル、
私の両手のひらの中で震えながら電話の着信音を鳴らしたスマートフォン。私は、その着信の相手を確認し、慌てて画面を耳に当てた。