Merry Christmas or Me ?
「……もしもし」
声が、震えた。
画面上には、《着信:柾》と書かれていて、私はこれが現実か夢なのか分からないままで、でも、出なければ次はないかもしれないという焦りに背中を押されて通話ボタンに触れた。
本当に、この画面の向こうには柾がいるのだろうか。半年、聞くことのなかった彼の優しく温かな声を聞く事ができるのだろうか。
「……久しぶり、だな」
たった一秒の間が、数秒にも、数十秒にも感じられた。
彼の声で発せられる一文字目を聞いたその時、何故か私の瞼からは涙が零れ落ち、それは頬に一筋の道筋を作ると、そのまま足元へ落ちた。
「久しぶりに沙織(さおり)の声聞いた」
半年ぶりに彼の声で呼ばれた私の名前。その声に、私の胸はぎゅっと苦しくなる。だけど、私は、その苦しさとともに今にも溢れ出しそうな涙を、息もできなくなってしまうくらいに必死にこらえていた。
「一年前の今日と同じ場所。俺が、どこか分からないとでも思ってる?」
「えっ……?」
「ドア、開けてみて」
電話越しに聞こえた彼の言葉。私は、まさか、と思った。
私は、スマートフォンを握りしめたまま、急いでドアの鍵を開け、ドアノブを捻るとゆっくり開いた。
────すると。
「お待たせ」
ドアの前には、あの時と変わらない、優しい笑顔を浮かべる愛しい人がいた。