Merry Christmas or Me ?
「まさ、」
「会いたかった」
名前を呼び終わるその前に、彼の両腕が私を包み込んだ。
彼は、優しく微笑みながら私を離すと「今日は伝えたい事があって来た」と言い、部屋の奥へと進んで行く。
私は、彼に着いて歩き、窓際に立つ彼の一歩後ろで彼を見ていた。この場所に彼がいるのは、本当に夢のようだった。
「こんなに綺麗な景色も、俺と一緒じゃないと味気ないでしょ」
窓から私へ視線を移した彼は、冗談ぽくそんな事を言って笑う。
「沙織」
「……なに」
「また、綺麗になったね」
他の男が放っておかなかったでしょ、と言う彼の笑顔は少しだけ引きつっている。
「……伝えたいことって、何」
私の言葉を聞いた彼は、にこりと笑った後、小さく深呼吸をした。
「そうだなあ……沙織は、だらだら話されるの嫌いなタイプだし、結論から言うね」
俺が沙織に伝えたかったのは、と言った彼がゆっくりとまた口を開く。そして、珍しくあからさまに緊張しているような硬い表情を浮かべた。
「メリー……」
口を開いて、そのまま次の言葉が出ない彼に、私は「クリスマス?」と返す。すると、彼は「あはは」と声をあげて笑う。
「そうだね、クリスマス、もあながち間違いじゃあないけど。それでいいの?」