不器用な彼氏 ~彼女に出会う前のお話~
バカな女だ。黙っていれば、良いものを。
海成は、続けて
『お前の男が俺だなんて、アイツは全く知らないみたいだな』
『・・・・』
相手の反応を待ったが、返答がないのでそのまま続ける。
『計算通りか?残念ながら、少し詰めが甘かったな』
『ちょ、ちょっと待ってよ、そんなの嘘に決まってるでしょ?』
さっきの勢いはどこへやら?動揺が隠せない様が滑稽で、むしろ可哀想な気さえしてくる。第一、自分と共通の友人と関係を持って、絶対バレないとでも思っていたのだろうか?
『安心しろ。涼介には何も言ってねぇから。まぁ、せいぜいうまくやれ』
そこまで言って、ソファの真後ろにあった、会議室の時計に目をやると、始業時間が近づいていることを知る。
『そろそろ時間だ。悪いな、マジで仕事なんで切るぞ』
いい加減、このくだらない電話のやり取りに嫌気がさして、強引にでも、こちらから切ろうとすると
『待ってよ、海成!』
電話の先で、呼び止められる。
・・・と、海成の中で、抑えていた感情が、不意にあふれ出てしまう。
『おい、お前・・・今、何て言った?』
『え?』
『何、勝手に、呼び捨てにしてんだ?』
感情を押し殺した声音だったが、その分低く冷たく響き、怒りの感情が直に伝わったのだろう。
相手が自分の剣幕に凍り付いた気配がした。
もういいだろう。いい加減、我慢の限界だ。
『てめぇに、呼び捨てにされる覚えなんかねぇ!二度と連絡してくるなっ!!』
そう怒鳴りつけると、相手の返事など待たずに、乱暴に電話を切る。
寝起きで、声を張り上げたせいで、乾いたのどが痛み、テーブルの上のコーヒーに手を伸ばすが、中身は空っぽだ。
『ったく、ついてねぇ』と独りごちる。
しかし、たった今、女を切った現実のわりに、なぜか、ショックよりも、清々しいのはなぜだろう?
そもそも、昨日、涼介から話を聞いた時点で、嫉妬や、裏切られたことに対する怒りや悲しみなども皆無で、何とも思わなかったのだから、もう既に自分の中で終わっていたのかもしれない。
とりあえず、めんどうなことが一つ片付いたと、サイドに置いたままだった、たばこを握りしめ、ソファから立ち上がると、社内の喫煙ルームに向かうために、会議室のドアを開けた。
海成は、続けて
『お前の男が俺だなんて、アイツは全く知らないみたいだな』
『・・・・』
相手の反応を待ったが、返答がないのでそのまま続ける。
『計算通りか?残念ながら、少し詰めが甘かったな』
『ちょ、ちょっと待ってよ、そんなの嘘に決まってるでしょ?』
さっきの勢いはどこへやら?動揺が隠せない様が滑稽で、むしろ可哀想な気さえしてくる。第一、自分と共通の友人と関係を持って、絶対バレないとでも思っていたのだろうか?
『安心しろ。涼介には何も言ってねぇから。まぁ、せいぜいうまくやれ』
そこまで言って、ソファの真後ろにあった、会議室の時計に目をやると、始業時間が近づいていることを知る。
『そろそろ時間だ。悪いな、マジで仕事なんで切るぞ』
いい加減、このくだらない電話のやり取りに嫌気がさして、強引にでも、こちらから切ろうとすると
『待ってよ、海成!』
電話の先で、呼び止められる。
・・・と、海成の中で、抑えていた感情が、不意にあふれ出てしまう。
『おい、お前・・・今、何て言った?』
『え?』
『何、勝手に、呼び捨てにしてんだ?』
感情を押し殺した声音だったが、その分低く冷たく響き、怒りの感情が直に伝わったのだろう。
相手が自分の剣幕に凍り付いた気配がした。
もういいだろう。いい加減、我慢の限界だ。
『てめぇに、呼び捨てにされる覚えなんかねぇ!二度と連絡してくるなっ!!』
そう怒鳴りつけると、相手の返事など待たずに、乱暴に電話を切る。
寝起きで、声を張り上げたせいで、乾いたのどが痛み、テーブルの上のコーヒーに手を伸ばすが、中身は空っぽだ。
『ったく、ついてねぇ』と独りごちる。
しかし、たった今、女を切った現実のわりに、なぜか、ショックよりも、清々しいのはなぜだろう?
そもそも、昨日、涼介から話を聞いた時点で、嫉妬や、裏切られたことに対する怒りや悲しみなども皆無で、何とも思わなかったのだから、もう既に自分の中で終わっていたのかもしれない。
とりあえず、めんどうなことが一つ片付いたと、サイドに置いたままだった、たばこを握りしめ、ソファから立ち上がると、社内の喫煙ルームに向かうために、会議室のドアを開けた。