誰も知らない世界へ
彼の服装は、騎士のようなものではなく、街に溶け込めるような市民らしい服を着ていた。
私も同様に、貴族だとはわからない格好をしている。
これは、特別調達したものでは無く小さい頃から街へ冒険に行くのが好きだった私のためにメイドが作ってくれたものだ。
街はやはり国の中心部なだけあってとても賑わっている。
とりあえず行くあてもないのでレボティーとブラブラ歩いていく。
「ミーア様、何をなさりに街へ来られたのですか?」
痺れを切らしてレボティーが尋ねてきた。
「とくにね、これといった理由は無いけれど。街の様子を見てみたかったの。」
それだけ言うと納得行かないと言った顔をしたレボティーだったがそこは、何も聞かず黙っていた。
しばらく歩くと可愛らしいカフェがあったので、そこへ入り一休みとることにした。
コーヒーとスコーンを注文したが、レボティーは、一応任務中なので、と飲食を私の毒味だけにしていた。
二人とも特に喋ることもせず黙って時間を過ごしていた。
でも、けしてそれは退屈な時間ではなくて昔から私の好きな時間だった。
カフェに入って少ししたときある客の話が耳に入ってきた。
「そういえば、シアン王子が妃に迎えた令嬢がトリシア様とシアン王子の仲を壊そうとしてるらしいぜ。」
私は目をつむりそっと耳を傾ける。
きっと忠誠心の高いレボティーも聞いているに違いない。
「何だ、そりゃあ。この国の人間は王子が、トリシア様とご一緒になられる事を期待してたのによ、二人の間に割って入りやがって」
「そうだ、そうだ!何が貴族だ!どこの令嬢か知らねーが殺されれば良いんだ。」
おしゃれなカフェには似合わない言葉が飛び交い始めた。
殺す、か。何度も何度も聞いた言葉だな、と思いながらコーヒーに手を伸ばそうとして目を開けると、レボティーが懐に閉まった刀を取り出そうとしている。
おいおい、ただの冗談じゃないかと思ったけど彼の忠誠心に少し感動した。
「レボティー」
優しくなだめるように声をかけると、怒りと悲しみとが入り混じった目で私を見てきた。
「ダメよ。民には思想な自由と言論の自由があるわ。」
「しかし……王族を侮辱するのは侮辱罪に当たります。王子の妃となられたミーア様を冗談だとしても‘‘殺す’’と言うのは、正当な罪です。」
レボティーが苦い顔をして訴えてきた。
きっと彼の言ったことは彼の建前なのだろう。本音はもっと違う気がする。
でも、決して嘘と言う訳でも無いのだと思う。
「ありがとう。でも平気よ、そんなの覚悟の上だから。なんてことないわ。」
笑ってそう言うとレボティーは、悲しそうな顔のまま小さくうなずき懐の刀から手を放した。
レボティーとの会話をしていて、彼らの会話を聞き逃していたけれど、途中からもう一度耳を傾けた。
彼らは愛も変わらず私とシアン様とトレシアの、三角関係の話をしていて、案の定私は悪者妃として話が進んでいた。
しかし、暫くして違った意見を持った青年が現れた。
「俺は、あのトレシアとか言う女嫌いだけどな。」
彼の言葉を聞いたとき少し驚いた。
この街の住人達はみんなトレシアの事を推しているのだと思っていたから、とても意外な意見に聞こえた。
さっきまで、トレシアを推していた男たちが何でだときいていた。
「だってよ、何か胡散臭くないか?目がさ冷たいんだよね。俺はあんまり好きじゃないな。」
それを聞いた男たちは何を言ってるんだと一斉に青年を攻め始めた。
私は、レボティーの方を向き彼の顔を伺った。
私の視線に気づいたレボティーは、声を小さくして話してきた。
「みなさんとは違った意見を持っているようですね」
「ええ。変わった人、何か理由があるのかしら」
レボティーと話しているとまた、気になる話を彼らはし始めた。
「ならよー、お妃様の事はどう思ってるんだよ」
トレシア派の一人が青年にそう尋ねた。
私も同様に、貴族だとはわからない格好をしている。
これは、特別調達したものでは無く小さい頃から街へ冒険に行くのが好きだった私のためにメイドが作ってくれたものだ。
街はやはり国の中心部なだけあってとても賑わっている。
とりあえず行くあてもないのでレボティーとブラブラ歩いていく。
「ミーア様、何をなさりに街へ来られたのですか?」
痺れを切らしてレボティーが尋ねてきた。
「とくにね、これといった理由は無いけれど。街の様子を見てみたかったの。」
それだけ言うと納得行かないと言った顔をしたレボティーだったがそこは、何も聞かず黙っていた。
しばらく歩くと可愛らしいカフェがあったので、そこへ入り一休みとることにした。
コーヒーとスコーンを注文したが、レボティーは、一応任務中なので、と飲食を私の毒味だけにしていた。
二人とも特に喋ることもせず黙って時間を過ごしていた。
でも、けしてそれは退屈な時間ではなくて昔から私の好きな時間だった。
カフェに入って少ししたときある客の話が耳に入ってきた。
「そういえば、シアン王子が妃に迎えた令嬢がトリシア様とシアン王子の仲を壊そうとしてるらしいぜ。」
私は目をつむりそっと耳を傾ける。
きっと忠誠心の高いレボティーも聞いているに違いない。
「何だ、そりゃあ。この国の人間は王子が、トリシア様とご一緒になられる事を期待してたのによ、二人の間に割って入りやがって」
「そうだ、そうだ!何が貴族だ!どこの令嬢か知らねーが殺されれば良いんだ。」
おしゃれなカフェには似合わない言葉が飛び交い始めた。
殺す、か。何度も何度も聞いた言葉だな、と思いながらコーヒーに手を伸ばそうとして目を開けると、レボティーが懐に閉まった刀を取り出そうとしている。
おいおい、ただの冗談じゃないかと思ったけど彼の忠誠心に少し感動した。
「レボティー」
優しくなだめるように声をかけると、怒りと悲しみとが入り混じった目で私を見てきた。
「ダメよ。民には思想な自由と言論の自由があるわ。」
「しかし……王族を侮辱するのは侮辱罪に当たります。王子の妃となられたミーア様を冗談だとしても‘‘殺す’’と言うのは、正当な罪です。」
レボティーが苦い顔をして訴えてきた。
きっと彼の言ったことは彼の建前なのだろう。本音はもっと違う気がする。
でも、決して嘘と言う訳でも無いのだと思う。
「ありがとう。でも平気よ、そんなの覚悟の上だから。なんてことないわ。」
笑ってそう言うとレボティーは、悲しそうな顔のまま小さくうなずき懐の刀から手を放した。
レボティーとの会話をしていて、彼らの会話を聞き逃していたけれど、途中からもう一度耳を傾けた。
彼らは愛も変わらず私とシアン様とトレシアの、三角関係の話をしていて、案の定私は悪者妃として話が進んでいた。
しかし、暫くして違った意見を持った青年が現れた。
「俺は、あのトレシアとか言う女嫌いだけどな。」
彼の言葉を聞いたとき少し驚いた。
この街の住人達はみんなトレシアの事を推しているのだと思っていたから、とても意外な意見に聞こえた。
さっきまで、トレシアを推していた男たちが何でだときいていた。
「だってよ、何か胡散臭くないか?目がさ冷たいんだよね。俺はあんまり好きじゃないな。」
それを聞いた男たちは何を言ってるんだと一斉に青年を攻め始めた。
私は、レボティーの方を向き彼の顔を伺った。
私の視線に気づいたレボティーは、声を小さくして話してきた。
「みなさんとは違った意見を持っているようですね」
「ええ。変わった人、何か理由があるのかしら」
レボティーと話しているとまた、気になる話を彼らはし始めた。
「ならよー、お妃様の事はどう思ってるんだよ」
トレシア派の一人が青年にそう尋ねた。