誰も知らない世界へ
翌日、案の定メイドは誰も起こしにこなかったので私は自分で起き身支度もさっさと一人でしてしまった。

彼女たちの悔しそうな顔が目に浮かぶ。

私を箱入り娘と思っている彼女達は身支度の一つも出来ないと思ってらっしゃるのね。

私は部屋を出て昨日と同じように食卓へと向かった。

先に席についていたシアン様に挨拶をして、自分も、席についた。

昨日のようにトレシアはここにはいない。

どうやら言いつけ自体は守ったようだ。

食事が運ばれてきて、二人とも沈黙のままフォークとナイフの触れ合う音が部屋に響く。

最初に沈黙を破ったのは私だ。

「お食事中失礼します。シアン様にお願いがあるのですが、聞いていただけますか」

フォークとナイフを置き彼の方を向いて言った。

彼からの返事が中々帰ってこないので私は気にせず続けて言葉を発した。

「本日は天気も良いので城下へ降りてみようと思うのですが、よろしいですか」

彼は、チラリと私を一瞬だけ見て

「好きにすればいい。」

それだけ言って部屋を出ていって行こうとした。

彼が扉の前まで、行ったところで私は席を立ち、「ありがとうございます」。

それだけ言ってまた、関についた。

護衛にはレボティーをつけよう。

街に溶け込めるような服なら何枚でもある。

ついでに、レボティーに稽古もつけてもらって……

今日の予定をささっと頭で考えながら食事を続けた。

最後の一口を飲み込み、水を二口飲んできちんと「ご馳走様でした」といってリジェスに「このあとすぐにレボティーに私の部屋まで来るよう伝えてちょうだい」と言伝て部屋へ戻った。

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