世界で1番愛してる。
クリスマスの贈り物にしては充分すぎるほどだった。
気が付けば雪が降り注いでいて、ライトアップされたホテルは幻想的な空間に変化している。
「ねえ、大にいちゃん」
「ん?」
「老後は任せてね」
えりの言葉に大樹は苦笑いする。
「老後もいいけど、明日、指輪買いに行くのはどうですか?」
「もうこの状況で充分だよ」
「だめ、買わせて」
「んー。分かった」
嬉しそうな表情を浮かべて言うえりに、大樹は「年末年始は忙しそうだな……」と家族達に報告することを想像して呟いた。
幼いえりを大樹に預けるような家族である。
「まるで光源氏ね」と笑ってお祭り騒ぎになることが想像できた。
「結婚するって、どんな感じなんだろうね?」
首を傾げて言う彼女に「もう直ぐ分かるよ」と大樹は微笑む。
「とりあえず、えり」
「ん?」
「大にいちゃんって呼ぶの禁止ね」
「え、そんな」
「結婚するんだよ。お兄ちゃんって呼ぶの変じゃない?」
「なんか、大にいちゃん急に態度変わりすぎ!」
「えり」
ニヤリと笑って大樹はえりの身体をぎゅっと抱き締めた。
「……」
「言ってみて?」
「……だ、大樹」
慣れない呼び方に真っ赤になるえりを、大樹はもう一度深く口づけた。
何度も、何度も、開いてしまった彼女との距離を縮めるように。
「愛してるよ、えり」
「私も。私も愛してる」
クリスマスの夜。
粉雪がライトアップされた東京の街を白く塗り潰していく。
溢れんばかりの幸せを、海辺の街が七色の光と共に受け入れた。