ラヴァニアの魔法
いつものように近衛兵と共に王宮へ帰ると、執事のセバスチャンが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

背筋が伸びていて、静かな物腰。老年であるのに、それを彷彿させないセバスチャン。
ここへ帰ってくるといつも思うことは、王立研究所と比べて空気が張っていること。

王宮で居るよりも、研究所で居る方が私は居心地がいいと思う。
ただ1人___兄を除いて。

「セバス、帰りが遅くなってすまない」

私が中へ入ると、お供をしていた近衛兵2人がランタンを片手に私に礼をし去って行った。

「事前に連絡がありましたから、大丈夫でございます」

一通りの基礎教養や王族の統治学を学び終えた私は、昨日からウィルソン教授の元、外交を学び始めた。そして外国のことを知れば知るほど自国のことを知らないと気付かされた。
それをウィルソン教授に言うと、今度実地調査に行こうという話になり話が盛り上がって、研究所を出る時にはすっかり陽が落ちてしまっていた。

「本日のご修学は如何でしたか」

そう言いながら、私の上着をそっと取るセバスチャン。
食事の間へ足を進め始めると、私と共に斜め後ろを歩く彼。

「外交を学び始めたよ。私はこの先もずっとこの国の平和を守っていきたいから」

「そうでございますか」

声が少し上擦るセバスチャン。

「フィアリード様がそのように成長なされてお父上様も喜んでいらっしゃいましたよ」



それから少し間を置いて、セバスチャンは連絡事項を告げた。

「明後日、レイチェル様がお戻りになられます」

重い病気で今は寝たきりが続いている父上に変わり、叔父のサポートの元、今は兄レイチェルが政治や外交全般を担っている。

私も一刻も早く、彼の力になりたいと思う。
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