この冬が終わる頃
レストランで通された席も運良く窓際だった。窓の下にはテレビで見た通りの景色が広がっている。

テンションが上がったのか、蒼が普段はあまり飲まないお酒を口にして笑ってる。でも、楽しそうなのはお酒のせいじゃないよね。特別な日を特別な人と過ごす幸せが此処にあるからだ。

此処に来てからずっと、蒼は溢れ落ちそうな笑顔を見せている。来て良かった。本当に幸せだ。夢心地で部屋の窓から青い光の海に見惚れていたら、肩にチョコンと顔が乗って来た。後ろから甘えたように腕を回す蒼が愛おしい。

「キレイだね。夢の中にいるみたい。」
「ホントだね。ありがとう、蒼。素敵な夜をプレゼントしてくれて。」

頰にキスして満面の笑みを浮かべるから、私も釣られて笑顔になってしまう。蒼が好き。離れたくない。

「夢が叶った?」
「うん。」
「なら、良かった。夢ってさ、こういう小さな夢を一つずつ叶えて行くうち、だんだん大きな夢に近付ける気がしない?」
「そうかも。」

蒼らしい可愛い発想だ。でも、その通りだと思うし、そうありたい。
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