誓いのキス
「顔の向き、もう少し右に。あ、顎は少し引いて」
カメラマンの指示に従って身体や顔の向きを変える。
「あぁ!違う違う!そうじゃないよ。もっと幸せそうにして!」
幸せそうに…って言われても。
「ねぇ、彼女本当に大丈夫?」
シャッターを切る音が途切れ、カメラマンの声が耳に届いた。
「このままじゃ時間の無駄だよ」
そうカメラマンが話しかけたのは広報課の男性。
背の高い彼は一瞬だけカメラマンを見下ろした後、腕組みの姿勢のまま、また私の方を見た。
その視線が痛い。