副社長とふたり暮らし=愛育される日々
椅子に座ってかくかくしかじかと説明すると、七恵はメイク台に軽く腰かけて驚きながら頷く。


「へぇ~、まさかあんたがOKするとはね。それで海都くんには素を見せたくないわけだ」

「うん。まだそんなに親しくないし、仕事仲間として食事しに行くだけだから」

「でも逆に、街歩いててりらだって気づかれるかもよ?」


七恵の懸念するひと言で、新たな問題が浮上してきた。

そうだ、りらだって正体不明のモデルなんだから、あまり人様に気づかれたくはない。しかも、一緒にいるのが海都くんってことになったら、すぐにSNSとかで拡散されてえらいことになるんじゃ……。

想像してゾッとしていると、七恵はすぐに何かを思いついたらしく、ニッと笑ってみせる。


「よし。じゃあ、りらとも瑞香ともわからなくしてあげるわ」

「そんなことできるの?」

「任せなさいって。とりあえず、服交換しよ」

「え!?」


自信たっぷりに言った彼女は、私の私服を手に取り、さっさと着替え始める。そして、困惑する私に今まで着ていた自分の服を手渡してきた。

とりあえず、言われた通りに七恵の私服を借りさせてもらうと、体型に大差ない私たちは、服だけは完璧に入れ替わった。七恵のコーディネートは、ニットにワイドパンツを合わせたもので大人っぽい。

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