副社長とふたり暮らし=愛育される日々

副社長に、“夕飯は外で食べてきます”とメッセージを送り、海都くんが待っているカフェへ向かう。

スタジオを足早に横切っていく時、「あれって……りらちゃん? え?」と、困惑したような誰かの声が聞こえた気がするけど知らんぷりして。

一階にある雑貨屋のようなカフェに入ると、一番奥の席に海都くんが座っていた。こちらも帽子と眼鏡を身につけているけれど、やっぱりオーラを隠しきれていないような気がする。

近づく私に気づいた彼は、にっこり笑顔で軽く手を上げた。

「ごめんね、お待たせ」と言って向かいの椅子に座ると、彼はぷるぷると首を横に振る。


「いーえ。りらさん、普段は雰囲気違うね。でもやっぱりオシャレ」

「そ、そうかな」


興味深げに見つめてくる海都くんに、本当は真逆の意味で雰囲気が違うけどね……と思いながら、ぎこちない笑いを浮かべた。

そんなことは知らない彼は、頬杖をつき、無邪気に笑って言う。


「コーデ合わせたカップルみたいで、なんか嬉しい」


ドキッとしてしまうのは、好意的な言葉からか、海都くんの可愛さからか……。ちょいちょい敬語じゃなくなるし、さてはこの子、小悪魔だな。

自分なりに分析していると、海都くんは「待ってる間にお店予約しといたんで、さっそく行きましょうか」と言って席を立つ。

意外とリードしてくれるんだ、と少し嬉しく思いながら、私もあとに続いた。

< 105 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop