副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「モデルはハーフの人多いけど、見た目外国人なのに英語喋れない人結構いるんだよね。そのギャップが面白くてさ」


あぁ、私もテレビで見たことがあるな、と思いながら笑って頷く。

それから彼はモデル仲間のことや、撮影現場での話をたくさん聞かせてくれて、私は興味津々で耳を傾けていた。


「りらさんって、普段はモデルの仕事してないの?」


ふいに尋ねられて一瞬ためらうも、大まかなことなら問題ないと思い、持っていたグラスを置いて口を開く。


「うん、全然関係ない仕事してるの。モデルはMimiだけ」

「やっぱり。最初に一緒に撮影した時、慣れてない感じだったからすぐわかった」


得意げな顔をされ、私は恥ずかしくなって苦笑を浮かべた。

すると、海都くんは少し身を乗り出すようにして組んだ腕をテーブルにつき、子犬のような瞳で私をじっと見つめてくる。


「あの時も今日も、俺のこと全然意識してなかったでしょ」


図星を指されてギクリとする。

思わず固まる私をそのまま見つめ続ける彼は、さらにこんなひと言を投げかけた。


「誰か、別の人のこと考えてたんじゃない?」


別の人──副社長のことが脳裏をよぎって、ドキリと心臓が動いた。

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