副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「ちょっと海都くん!?」

「あ、電話中だったんだ。ごめんね、冗談冗談」


スマホを片手に動揺する私に気づいた海都くんは、少し眉を下げて笑いつつ、両手を合わせて謝った。

もう、いきなりあんなこと言われたらびっくりするって。強制終了しちゃったけど、副社長気を悪くしていないかな。

ふぅと息を吐く私と一緒にお店を出た海都くんは、寒そうに両手をポケットに突っ込みながら言う。


「大丈夫だよ、ちゃんと家まで送り届けるから。りらさんの家って新宿駅の近く?」

「えっ!?」


思わず足を止める私を見て、彼はキョトンとして首をかしげる。

今日私が帰るのは、もちろん副社長のマンションだ。でもそこまで来られて、万が一副社長と鉢合わせたら困ってしまう。彼の住家も知られてしまうわけだし。

ここはとりあえず、本当の家のことを言っておこう。


「あの、私の家ちょっと遠いの! 新宿からさらに電車乗らなきゃいけないから、ほんと気持ちだけで」

「そう? あ、もしかして警戒してる? 俺が送り狼になるのは好きな子に対してだけだよ」

「そんな心配はしてないけど!」


可愛い顔して大胆なことを言うなと思いながら、私はぶんぶんと首を横に振った。

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