副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「瑞香が俺以外の男を優先するなんて、初めてのことなんですよ。大切にしてくれなきゃ承知しませんからね。強烈なニューハーフを仕向けますからね!」

「そりゃ勘弁だ」


ビシッ!と人差し指を向けられた副社長は、とっても嫌そうに口元の笑みを歪めた。

お兄ちゃんは『何かあったらすぐ帰ってこいよ。ていうか、少なくとも週に一度は必ず帰ってこい!』と私に言い聞かせ、泣く泣く部屋を出ていった。

せっかく帰ってきたのに、私がいないんじゃ寂しいよね……。お兄ちゃんの気持ちを思うと、とっても申し訳なくなる。

けれど、もういつでも会えるのだ。その安心感はかなり大きい。


「よかったのか? 大好きな兄貴と一緒に帰らなくて」


お兄ちゃんを見送ったあと、再び並んでソファに腰を下ろしながら副社長が言った。その目は意地悪っぽく細められている。

軽く挑発してくるような彼に、私は苦笑しつつ頷く。


「私も、自分に驚いてます。あれだけお兄ちゃんのことを待ってたのに、今はここから離れるのが嫌なんて……」


もう冷めてしまったコーヒーカップを両手で持ち、口をつけた。今日はいろいろなことがあった怒涛の一日で、疲れが一気に襲ってきた気がする。

そんな私を、副社長はまだ休ませてはくれない。

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