副社長とふたり暮らし=愛育される日々
でも、海都くんと話してから、私もモデルの道を一歩踏み出したくなった。今の自分を変えるために、とりあえずなんでもチャレンジしてみよう、という前向きな気持ちなのだ。

何より、Mimiの香水作りに関るなんて体験は、滅多にできないこと。この素敵な機会を逃したくない。


「私、もっとモデルの仕事を意欲的にやろうって決めたんです。きっとこれもチャンスだから、思い切って挑戦してみようかなって」


少し胸を踊らせつつ、朔也さんを見上げて宣言した。

彼は納得したようにふわりと微笑み、私の頭を片手で包み込むように撫でる。


「向上心がある子は、なおさら好きだ」


ストレートに言われて、トクンと胸の奥で優しい音がした。


「俺も、りらはもっと世間に出るべきだと思ってる。そのくらいの魅力を持ってるんだから」


好きだと言ってくれることも、お世辞でも背中を押してくれることも、照れるけれど素直に嬉しい。

くすぐったさを感じつつ、「ありがとうございます」と言うと、朔也さんはなぜか少しだけ不服そうな顔をする。


「皆にお前の可愛い姿を見られたり、男と撮影したりするのは、本当は避けたいが……わがまま言ってられないしな」


ぶつぶつと文句を言って独占欲を露わにする彼は、なんだかいじける子供みたいで、私は思わず笑ってしまうのだった。


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