副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「そっかぁ、ついにりらの素顔が暴かれるわけね。でも、皆イメチェンしたんだって思うだけじゃない? 心配いらないよ」


どこか安心したような笑みを見せる七恵に、私も笑って頷いた。

自分が思っているほど、他人は気にしないかもしれない。気楽にいこうと、今の私は思えるようになっていた。



メイク室を出たら、いよいよミーティングルームがある五階へ向かう。

ミーティングルームの隣にはマーケティング部のオフィスがあり、ガラス張りのそこは社員がグループになって話し合っていたり、忙しなく動いていたりと活気に満ちている。

時刻は会議が始まる一時の十五分前。まず柴田さんに声をかけてくれと言われているため、オフィスの中に入ろうとした。

すると、ミーティングルームからひとりの女性社員が出てくる。首から社員証を提げたその人は、ワンレングスの前髪にストレートのボブヘアが大人っぽい、美人さんだ。

黒のパンツスタイルの服装からも、背筋をピンと伸ばした綺麗な姿勢からも、デキる女性という感じがする。年齢は三十歳前後くらいだろうか。

ここから出てきたということは、これから会議に参加するメンバーのひとりなのかもしれない。

そう直感した私は、彼女に向かって「お疲れ様です!」と頭を下げた。

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