副社長とふたり暮らし=愛育される日々
驚いたように切れ長の瞳を開いて足を止めた女性は、クールビューティと言える整った顔を、すぐにニュートラルに戻す。


「……お疲れ様です。あなた、モデルのりらさん?」


あまりにこりともせずに落ち着いた声で言われ、私はぴしっと姿勢を正し、九十度のお辞儀をする。


「はい。これからお世話になります。よろしくお願いします!」

「ぷっ」


ん? 今、ものすごく鼻で笑われたような気が。

頭を上げると、片手をあてた口元にだけ笑みを浮かべるクール美女がいる。それがどこか怖く見えるのも気のせいだろうか。


「ごめんなさい、なんか新入社員みたいだから。もっと垢抜けた人だと思ってたわ」


クスクス笑いながら言う彼女に、私は目をパチパチとしばたたかせる。

それはつまり、素人じみているってこと? すごく嫌味っぽい言い方だったけど、まさかね?

若干口の端を引きつらせていると、彼女は改まって自己紹介をしてくれる。


「私は商品開発部チーフの三嶋彩音(みつしまあやね)です。今回の企画も担当させていただきますので」


やっぱりメンバーのひとりだった!と思いつつ、私はもう一度頭を下げようとする。


「三嶋さん、よろしくおね──」

「くれぐれも、足を引っ張らないでくださいね」


私の挨拶はどうでもよさそうな調子で、そう忠告された。

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