副社長とふたり暮らし=愛育される日々
小柄だけれどスタイルの良い明智さんの後に続いて、綺麗な廊下を進む。副社長室と書かれた部屋の前に来ると、彼はドアをノックし、「失礼します」と一礼して中に入った。

私も遠慮がちに足を進めると、目に入ったのは手前の応接スペースと、正面にある一台の広々としたデスク。

そこに座っているのは、もちろんバリバリ仕事をしている朔也さんだ。真剣な眼差しで、資料に目を通している。

そういえば、朔也さんがオフィスで仕事しているところをしっかりと見るのは初めて。きりりとした表情も、顎に手を添えて思案している姿も、とてもカッコいい。

一瞬見惚れてしまう私をよそに、明智さんが声をかける。


「副社長、りらさんをお連れしました」

「あぁ。りら、お疲れ」


資料から、会釈する私に目線を上げた彼は、引き締めていた表情をふっと緩めた。

昨夜も今朝も、毎日顔を合わせているのに、こうして会うとなんだか気恥ずかしくて、胸がくすぐったい。


「俺も最初だけ会議に顔出すから、一緒に行こう」

「あ、はい。わかりました」


それで呼んだのか、と理解するも、気になるのはやっぱり“厄介な話”というもの。


「あの……明智さんの話って?」


私の隣に立ったままの彼に問いかけると、眼鏡の奥の瞳が私を捉え、ほんの少し声色を暗くして告げる。

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