副社長とふたり暮らし=愛育される日々
彼を追って後ろを向くと、メイク台に軽く腰かけて腕を組む、余裕のある姿が目に映る。


「でも、そうか。どうりで色気を感じないわけだ」

「うっ」


きっぱりと放たれた言葉が、弾丸のように胸にめり込んだ。これがゲームなら、きっと一気にヒットポイントが半分に減っている。

しくしくと泣きたい気分になりながら、再びうなだれる私。


「やっぱりそうなんですね……」

「落ち込むなって。そんなの自分で出せるものじゃないんだから」


じゃあ、どうすれば……という私の疑問に答えるかのように、副社長の口からこんなひと言が飛び出す。


「女の色気も、恋する表情も、男が引き出すものだ」


淀みのない低い声と、力強さを秘めた瞳にセクシーさを感じて、ドキリと胸が鳴った。

“女の色気は男が引き出すもの”……。それなら、副社長のこのゾクゾクさせるような色気は、どうやって出しているというの?

真剣に考えていると、彼はこんなことを言い出す。


「だから、俺がおまじないをかけてやる」

「おまじない?」


急に可愛らしいことを言うので、キョトンとして首をかしげると、副社長はふっと微笑む。「おいで」と軽く手招きされ、なぜか胸の奥できゅっと音がした。

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