副社長とふたり暮らし＝愛育される日々

「私も今日、偶然耳にしたのですが……あなたと副社長の熱愛疑惑が広がりつつあるようです」

「はぁっ!?」


私と朔也さんの、熱愛疑惑ー!?

まるで芸能人のスクープのような言い方をする明智さんに向かって、思わず叫んでしまった。

どうして噂に……まさか、私たちが同居していることがバレたとか!?

ひとりあたふたする私に、明智さんは淡々と続ける。


「なんでも、ふたりが駅で寄り添っているところを見た人がいるのだとか。マーケティング部ではその話題で持ち切りです。ほかの部署にも広まるのは時間の問題かと」


それを聞いて、海都くんと食事をしたあとのことをよくよく思い返してはっとした。

あの時、私眼鏡をはずしたっけ。あの一瞬で、私に気づいた人がいたってことだよね？　迂闊だった……！

自分の無用心さを悔やんで頭を抱えたくなるけれど、朔也さんは書類をまとめながらしれっと言う。


「あんなとこ見てたやつがいるんだな。よかったよ、キスしなくて」

「そーいう問題じゃありません！」


スイッチが入ったのか、突然くわっ！と般若のような形相で怒りながらつっこむ明智さん。しかしそれは一瞬で、すぐにいつもの冷静さと無表情を取り戻す。