副社長とふたり暮らし＝愛育される日々
「どうなさいますか、副社長？　りらさんを優遇してモデルにしたと疑われても仕方ありませんし、そうなれば社員からの不満も出るかもしれない。いろいろと面倒なことになりますよ」


彼の危惧する言葉で、一気に不安が襲ってくる。

朔也さんはこの会社の副社長であって、私は自社商品の顔となるモデル。ただの浮ついた噂話というだけでは済まないのかもしれない。

たとえ、付き合っていないとしても、一度流れてしまった噂の印象はなかなか消えないものだろうし……。

眉を下げて悪いことばかり考えていると、朔也さんはいまだに平然としたまま、こんなことを言う。


「俺が彼女を愛してるのは事実だからな。それを否定する気はない」

「ですが、それでは……」

「心配するな」


不安そうにする明智さんに、朔也さんはきっぱりと言いきった。そして腰を上げ、片手をポケットに入れて私たちのもとへ歩み寄る。


「うちの社員は優秀だ。こんなスキャンダルごときで惑わされるような奴らじゃないさ。俺も、皆の士気を下げるようなことにはしない」


朔也さんの口調には淀みがなく、本当に大丈夫だと思わされるような安心感があった。

少し気持ちが落ち着き始める私を、彼は優しくも真剣な瞳で見下ろし、力強さを含んだ声を投げかける。


「お前は、お前のやるべきことを全力でやれ」

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