副社長とふたり暮らし=愛育される日々
そのひと言で、気持ちが引き締まる。

私がやるべきことはプロジェクト。何もかも初めてだけれど、まずはもう間もなく行われる企画会議に集中しなければ。余計なことを考えている場合じゃない。

自分を奮い立たせ、しっかり「はい」と返事をすると、朔也さんはふわりと微笑み、私の頭の上にぽんと手を置いた。

「行くぞ」と言ってドアに向かう彼を目で追う明智さんは、小さくため息を吐き出す。


「どうなることやら……」


独り言をぽつりとこぼした彼の、キラリと輝く眼鏡がこちらに向けられ、私は反射的に背筋を伸ばす。


「りらさんも、今後はご自身の立場をよく考えて、慎重に行動するようにお願いします」

「はい」


肝に銘じながら返事をすると、「それと」と言葉を繋げた彼は、デフォルトの無表情でこんなことを言う。


「会議、頑張ってください。商品開発チームの女性陣は、気の強い方と……副社長をお気に入りの方が多いですから」


ただのエールではなく、むしろ忠告のようなひと言に、私はピシッと固まった。

まさか、さっき三嶋さんが怖かったのは、副社長絡みで……? ほかにも同じように私を敵対する人がいるかもしれないってこと?

ずーんと気を重くする私に構わず、明智さんもさっさと続き部屋の秘書室へと姿を消すのだった。


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