副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「すごくいい香りなのに、どうしてあまり香水を見かけないんだろうって、ずっと不思議に思ってて……」
そう口にした時、今度は斜め左のほうから、間髪入れずに冷めた声が飛んできた。
「そんなの、調合が難しいからに決まってます」
そっけない口調をするその人は、朔也さんがいたさっきまでは笑顔だった三嶋さんだ。
ギクリとして少々構えてしまう私に、彼女はマネキンのように綺麗な無表情で、つらつらと理由を話し始める。
「沈丁花の香り成分は百種類以上あるんだけど、その中から香り由来成分を特定することが難しいんです。花びらや根には毒があって、安定した抽出もできないから、アロマもあまり出回っていないの」
「そう、なんですか……!」
知らなかった、そんなに難しいものだなんて。
ほかのメンバーも、皆一様に渋い顔をしている。けれど、私が一番再現したいのは沈丁花だ。簡単には諦めたくない。
「人工的に合成して、なんとか自然な香りに近づけるっていうことも難しいですか?」
とりあえずなんでも案を出してみようと思い、尋ねてみると、三嶋さんはほんの少し煩わしそうな表情を見せる。
そう口にした時、今度は斜め左のほうから、間髪入れずに冷めた声が飛んできた。
「そんなの、調合が難しいからに決まってます」
そっけない口調をするその人は、朔也さんがいたさっきまでは笑顔だった三嶋さんだ。
ギクリとして少々構えてしまう私に、彼女はマネキンのように綺麗な無表情で、つらつらと理由を話し始める。
「沈丁花の香り成分は百種類以上あるんだけど、その中から香り由来成分を特定することが難しいんです。花びらや根には毒があって、安定した抽出もできないから、アロマもあまり出回っていないの」
「そう、なんですか……!」
知らなかった、そんなに難しいものだなんて。
ほかのメンバーも、皆一様に渋い顔をしている。けれど、私が一番再現したいのは沈丁花だ。簡単には諦めたくない。
「人工的に合成して、なんとか自然な香りに近づけるっていうことも難しいですか?」
とりあえずなんでも案を出してみようと思い、尋ねてみると、三嶋さんはほんの少し煩わしそうな表情を見せる。