副社長とふたり暮らし=愛育される日々
朔也さんも沈丁花の香水を作りたいと思っていたなんて……それも知らなかった。

もしかして、私の背中を押してくれたのは、彼にも何か思うことがあったからなのかな。

でも、おかげでチャレンジすることが決まったんだ。このことを話したら、きっと喜んでくれるよね。

彼の笑顔を頭に浮かべ、早く帰ってきてほしいなと考えて口元を緩めていると、三嶋さんが私の顔を覗き込んでくる。


「まさかあなたがまた言い出すとはね。あの人に何か吹き込まれた?」

「っ、そんなわけないじゃないですか!」


アドバイスはもらったけど、沈丁花にしろ的なことは言われていないから!

きっぱり否定すると、三嶋さんは長い前髪を耳にかけながら、「冗談よ」と笑った。

嫌味じゃなく、余裕がある人だなぁ……。ちょっとしたことですぐキョドってしまう私とは大違い。仕草も雰囲気も、“カッコいい大人の女性”という感じで羨ましい。

そんな彼女から“副社長”という言葉が出ると、なんだかドキッとしてしまう。この間から気になっていたことが、急激にむくむくと芽を出してくる。

いっそのこと聞いてみようか、朔也さんとのこと。ふたりは、仕事以外に何か繋がりがあるのかを。

三嶋さんがドアノブに手を伸ばしたと同時に、私は思い切って口を開いた。

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