副社長とふたり暮らし=愛育される日々
でも、まずはりらとしての役目を果たさなければいけない。そして今は、美味しいチョコレートを作らなきゃ!

この間、沈丁花の香水を作ることになったと報告した時、彼は予想通り喜んで、『よくやったな』と頭を撫でてくれた。

あの時以上の笑顔が見られたらいいな、と密かに期待して、チョコレートを溶かしていく。

お菓子はあまり作ったことがないけれど、毎年バレンタインはお兄ちゃんに手作り生チョコをあげているから、これには自信がある。

お兄ちゃんにも渡しに行かなきゃな、と思いながらチョコレートを溶かしていると、ダイニングテーブルに置いていたスマホが鳴る。

手を休めてそれを見ると、朔也さんからのメッセージだった。


「“今日も遅くなる”……か」


メッセージを読み上げて、小さく息を吐き出す。

明日の準備で、彼はここのところ忙しい。夕飯はなかなか一緒に食べられないし、私が寝てから帰ってくることもある。


「……寂しい」


ぽつりと呟き、コトリとスマホをテーブルに置いた。

また私の寂しがりな部分が出てきてしまう。好きだと自覚すると、一日顔が見られないだけでも恋しいと思うようになった。

恋の力ってすごい。すごいけど、ちょっと怖い。

もしも朔也さんがいなくなったら、私はどうなってしまうのか……見当もつかない。


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