副社長とふたり暮らし=愛育される日々

発表会当日、午後三時の十分前。私は優しいピンク色のパーティードレスを身に纏った、りらの姿で会場にいた。

本社七階の、百五十人ほどが入れる広さの大会議室に、それと同じくらいの人数の関係者が集まっている。色とりどりの花で装飾された会場は、とても華やかだ。

私はユーフォリックモードの社員が集まる会場の脇で、静かに自分の出番を待っている。衝立で仕切られているため、招待客からは見えない。

少し緊張してきてそわそわしていると、肩をぽんっと叩かれた。振り向けば、数週間ぶりに会う可愛い彼がいて、私は目を丸くする。


「海都くん!」

「久しぶり。発表会、来てもいいよって言われたから来ちゃった」


ニコッと屈託なく笑う彼は、相変わらず可愛い。チェスターコートに黒いパンツを合わせた、今日のスタイルは大人っぽいけれど。

海都くんと撮影した香水は発売が少し先になるため、今日は紹介しないらしい。

だから来ないと思っていたけど、来てくれて嬉しいな。気心知れた人がいると、緊張が和らぐから。

スタッフが忙しなく動く中、彼は私の隣に立って問いかけてくる。


「りらさんは最後までいるの?」

「うん、一応。でも途中でちょっと抜けるかも」


自由に見学していい時間になると、ディスプレイされた商品を各々見て回ったり、撮影したりする。その間、私は会場から出てもいいことになっているのだ。

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