副社長とふたり暮らし=愛育される日々
会社の考えでは、りらの存在はまだ謎のままにしておきたいらしく、社外の人たちに素性を知られないようにするためだ。

人前に出なければ自由にしていていい、と言われているから、別のフロアにある休憩スペースで時間を潰そうかな。

そう考えていると、海都くんは「そっか」と頷き、小悪魔っぽい笑顔を見せて言う。


「じゃあ一緒に抜け出そ」

「えっ……一緒に?」

「そう。ひとりじゃつまんないでしょ」


ぽかんとした私だけど、確かにひとりでいても暇を持て余してしまうかな……とも思う。

少しだけ考えたあと、遠慮がちにもう一度確認する。


「付き合ってくれるの?」

「もちろん。ていうか、俺が一緒にいたいんだって」


無邪気に笑ってさらりと言われ、私はドキリとすると同時に複雑な気分になった。

そういえば、海都くんに好意を持たれているんだっけ……? でも、別にはっきり好きだとか言われたわけじゃないし、自惚れかもしれないよね。

ぐるぐると考えを巡らせていると、突然「りらさん」と呼ばれ、背中に手を回された。

海都くんに片手で抱かれたような体制になり、一瞬何事かと思ったものの、歩いてくる人とぶつかりそうになった私を避けさせてくれたのだと気づく。

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