副社長とふたり暮らし=愛育される日々
朔也さん、海都くんを見る目がちょっと笑っていないような気がしたけど……まさかね。

というか、朔也さんまで便乗して“姫”って。冗談でもこっちはドキッとしてしまうからやめてほしい……。

顔がうっすら火照るのを感じていると、ぽかんとしていた海都くんが、男性社員と話す朔也さんを見たまま私に問いかける。


「あの人、副社長だよね?」

「あ、うん。海都くんも知ってるんだ」

「まぁね。でも、そっか。なるほどね……」


顎に手をあてる海都くんは、何やらひとりでぶつぶつ言っている。

どうしたのかなと不思議に思ったけれど、彼の視線の先にいる朔也さんを私も見ていると、今夜のことへと意識が逸れていく。


昨日作った生チョコは上出来で、綺麗にラッピングもした。帰ったら渡そうと思い、マンションの冷蔵庫にしまってある。

朔也さんは打ち上げも兼ねた食事会があるらしいから、また帰ってくるのは遅いだろうけど、今日は絶対待っていよう。

私が想いを伝えたら、どんな反応を見せてくれるかな。

あれこれと想像して今から緊張しているうちに、ユーフォリックモードの社長、つまり朔也さんのお父様もやってきて、いよいよ発表会が始まる。

最初に挨拶する社長は、顔はもちろん、醸し出す雰囲気もどことなく朔也さんに似ていて、厳しさと優しさを合わせ持っているような印象だった。

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