副社長とふたり暮らし=愛育される日々
七恵から聞いたけれど、私と朔也さんの熱愛疑惑はだいぶ広まっているらしいから、きっとここにいる女性社員も噂を知っているのだろう。

朔也さん、あんなふうに意味深なこと言っちゃってよかったのかな? Mimiのアピールはバッチリだろうけど……。


なんだか複雑な気分と恥ずかしさで縮こまっているうちに、朔也さんの話は終わった。それから、各新製品の開発チームがその特色を説明し、いよいよ私の挨拶の番だ。

ステージに上がると、後方にきらびやかな商品のディスプレイと、手前には並んだ椅子に座っている大勢の人が待ち受けていた。

撮影で皆の視線を浴びることには慣れているものの、喋ることはあまりないから、とても緊張する。

でも、これもMimiのため! そう気合いを入れてマイクを握りしめ、笑顔で口を開いた。



なんとか挨拶も噛むことなく終えて、自由時間に入った。私は約束通り、海都くんと一旦会場をあとにして、四階の総務部の隣にある休憩スペースに向かう。

丸いテーブルが四台と、数脚の椅子が置いてあるその場所には誰もいない。自販機で飲み物を買い、ふたりで椅子に腰を下ろした。

総務部のオフィスでは仕事中の社員が若干いるようだけれど、出てくる気配はない。私は温かいココアをひと口飲むと、大きく息を吐き出した。

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